高血圧と診断された人が、まず真っ先に医師に指導されるのが「減塩」ではないでしょうか。
高血圧といえば、普段から塩分の多い食事をしている人がなりやすいというイメージもあると思います。
しかし色々と調べていく内に、「高血圧と塩分は関係ない」という説も耳にしました。
それってどういうこと?
塩分が高血圧の原因じゃないの?
じゃあ減塩しても無意味ってこと?
疑問がたくさん浮かびますが、ここはきちんと謎を解消しておきたいところです。
高血圧と塩分の関係をまとめました。
高血圧に塩分は関係ないって本当?
高血圧に塩分は関係ないという説は、正解でもあり、不正解でもあります。
というのも【高血圧】と一言で言っても、一つのタイプではないからなのです。
タイプって何?と思われたでしょうが、その前に、そもそもなぜ「塩分を摂ると血圧が上がる」と言われているのかを説明しておきたいと思います。
塩分と血圧の因果関係
塩分を過剰に摂取すると、血液中の水分が増えます。
これは血液の浸透圧を一定に保とうとする働きによるものです。
濃度が異なる水が2種類あれば、その濃度を一定に保とうとして移動する力のこと
血液量を増やしてナトリウムの濃度を薄めるための、体の反応といえるでしょう。
しかし、血液量が増えれば問題も発生します。
それは簡単にいえば
↓
血液中のナトリウム値が濃くなる
↓
濃度を一定に保つため血中の水分が増える
↓
体中を循環する血液量の増加
↓
血管の壁にかかる抵抗が強くなる
↓
血圧が上がる
このような流れがあり、塩分(ナトリウム)の摂り過ぎは高血圧へとつながってしまうと言われているのです。
さて、前述した「高血圧のタイプ」に話を戻しましょう。
実は高血圧の人には「塩分に反応しやすいタイプ」と「塩分に反応しにくいタイプ」があるそうです。
ナトリウムの影響を受けやすい「食塩感受性タイプ」とそれほど影響を受けない「食塩非感受性タイプ」に分けられます。
塩分に反応しやすく、減塩によって血圧が下がるタイプ
● 食塩非感受性タイプ
塩分に反応しにくく、減塩しても血圧が下がりにくいタイプ
減塩して実際に血圧が下がるかどうかは、どちらのタイプかによるところなのでしょう。
それはつまり、減塩すれば高血圧が改善する人もいれば、減塩してもさほど効果の見られない人がいることも事実だといえます。
ここで新たな疑問が浮かびます。
食塩感受性タイプは塩分過多が高血圧の原因の一つになるとしましょう。
では食塩非感受性タイプの人は、一体なにが原因で血圧が高くなってしまっているのでしょうか?
それはアンジオテンシンⅡという生理活性物質が、心臓の収縮する力を高めてしまうから。
それによって血管も収縮してしまい、結果として血圧が上がる、というメカニズムのようです。
さて、どうすれば自分あるいは家族が、「食塩感受性タイプ」「食塩非感受性タイプ」のどちらなのかを知ることができるのでしょう。
これについては数値などで分かることではなく、どちらのタイプなのかを知る術は今のところありません。
「減塩しても血圧が変わらなかったから、自分はきっと食塩非感受性タイプだ」
と早合点するのはNG。
たとえどちらのタイプでも、減塩はしておいたほうが良いのです。
減塩の効果には個人差があるとはいえ、日本人はそもそも食塩の摂取量が多い傾向があります。
なんでも過剰摂取するのは避けるべき。
体内のバランスを保つためにも、塩分は控えめにしておきましょう。
高血圧で減塩するとどんな効果があるのか
高血圧への減塩での効果は、食塩感受性タイプの人に限った話でもなさそうです。
日本人の塩分摂取量は、世界的に見ても多いです。
現在、日本で推奨されている「1日分の塩分摂取量」は
● 男性 8g未満
● 女性 7g未満
です。
高血圧の人は6g未満の塩分摂取量に抑えることが勧められています。
しかし、現状の日本人の塩分摂取量は平均10g以上だと言われています。
かなり多いですよね。
欧米ではもっと厳しい塩分制限が勧められているようです。
健康な人でも6g未満。
高血圧症の人は4g未満なのだとか。
かなり厳しめの塩分制限です。
確かに日本は食塩だけでなく、しょうゆや味噌などを使った塩分多めの料理が多いですね。
もちろん醤油や味噌などの発酵食品は、適度な量であれば健康効果も期待できます。
なによりおいしいですからね。
しかし高血圧の人はもちろん、健康な人でも、意識して普段から減塩を心がけておいたほうが良さそうなのです。
世界で見ても塩分摂取量の少ない民族は、高血圧症が少ないと言います。
年齢により高血圧になる人も少ないそうです。
一方、日本人はなんと3人に1人が高血圧なのだとか。
日本人は寿命が長いイメージがありますが、医療技術や制度などに助けられている部分も多いのかもしれませんね。
病院へ行くと、お年寄りを多く見かけます。
高血圧や、高血圧が原因で引き起こされる病気の治療をされている人も、きっとたくさんいらっしゃることでしょう。
長生きするのはもちろんですが、人生を楽しく過ごせるように、健康寿命を延ばすようにしたいところです。
塩分と高血圧と病気 リスクを知っておこう
塩分と高血圧がどんな病気を引き起こすのか、そのリスクを知っておくことは大事です。
前章でも述べましたが、ナトリウム(塩分)は血圧を上げる場合があります。
しかしただ単に「血圧を上げる」だけでないのです。
ナトリウムは直接、心臓や血管に悪い影響を及ぼすこともあると言います。
ナトリウムが多いと心筋細胞は肥大します。
心臓が肥大すると、心臓にかかる負担が大きくなってしまいます。
すると【狭心症】や【心筋梗塞】などの心疾患を起こしやすくなるのです。
また塩分過多だと、カリウムやカルシウムが尿として体外へと排出されやすくなってしまいます。
そうすると尿のカルシウム量が増え、【腎結石】や【尿路結石】の一因となる恐れも。
カルシウムが出てしまうので骨量が減り【骨粗しょう症】の原因になる場合もあります。
そして塩分が多いと、【胃潰瘍】や【胃がん】の原因とされているピロリ菌が増えやすくなってしまうと言います。
もちろんこれらの病気すべてが、塩分の摂り過ぎが原因なのだとは言い切れません。
しかしどう見ても、塩分を摂り過ぎることはマイナス要因にはなっても、プラスに働くことはなさそうです。
健康寿命を延ばすためには、高血圧の人に限らず、減塩は必須であると言えるでしょう。
まとめ
高血圧は、軽いうちはあまり自覚症状がありません。
徐々に進行し、やがて動悸・息切れがしたり、頭痛などとして表面にあらわれます。
それを治療もせず、対策も取らずさらに放っておくと、すでに合併症を引き起こしてしまっていたり、重症化してしまっていることも充分考えられます。
普段の食事内容をもう一度見直して、塩分を摂り過ぎていないかを、確認して改善したいものですね。
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